私の一冊 363号

『布田保之助(ふたやすのすけ)の心』

たたかいの人―田中正造
  • 「布田保之助(ふたやすのすけ)の心」
             道徳教育用郷土資料『くまもとの心』小学校3・4年生より
  •     
  • 発行 熊本県教育委員会 / 制作・発売 熊日情報文化センター
    編集 熊本県教育庁教育指導局義務教育課 

  •   福澤 光祐 

 この物語「布田保之助の心」は、昨年度に熊本県教育委員会が道徳教材として作成した資料に掲載されているものの一つである。

 この資料は、当初、教材として全ての公立小中学校に児童生徒数分を配備したのだが、郷土を知る読み物という意味でも非常に面白いと好評であったことから、現在は市販している。

 通潤橋は、ご存知のとおり、山都町にある水道橋であり、深い谷を越えて農業用水を送るために江戸末期に築かれている。この橋は、現在でも用いる「逆サイフォン方式」という農業土木の理論に基づいて建造されており、当時の科学技術の見識の高さ、更に、種山石工の技術者たちの仕事の精緻さに敬服の念を禁じ得ない。

 この物語は、惣庄屋(村の取りまとめ役)であった布田保之助が、建設構想を立て、時には細川藩にも掛けあい、通潤橋の完成を成し遂げるまでを記したものとなっている。建造の経緯を知ってみるのと否とでは、感じるものが異なるのは明らかである。この橋の建造に当たっては、失敗とそれを克服するための実験を繰り返し、苦難の末に完成にこぎつけた。橋に水が通ったことをこう記している。「大きなかん声が聞こえ、みんなからわきおこった喜びの声とはく手が谷間にひびきわたりました。流れ出た水を両手ですくって飲んだ保之助のほおは、涙にぬれて光っていました。」

 子どもたちには、この資料を通じて、先人たちの情熱を郷土の中に感じ取ってほしいと願っている。

                                                              

 (熊本県教育庁 教育総務局 社会教育課長)