私の一冊 358号

『子どもへのまなざし』 (続、完シリーズ 3巻)

君たちはどう生きるか
  • 子どもへのまなざし (続、完シリーズ 3巻)
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  •  佐々木正美 著 (福音館書店)
  •   上原 伊都子 

 この3巻シリーズは児童精神科の佐々木正美先生が、永年続けてこられた保育園での勉強会「佐々木セミナー」の講演録をまとめたものである。初刊は15年前に出版されたが、その2年後読者からの質問に答える形で続編が出版され、さらに2年前 完『子どもへのまなざし』が出版された。E.H.エリクソンの「ライフサイクルモデル」を基盤にしながら、乳幼児期から老年期まで、それぞれの時期にどのような課題を乗り越え、人間は発達成熟していくのか、また後半は他者とのコミュニケーションが苦手な特性を持つ発達障害、自閉症の方への理解と支援の在り方について柔らかな語り口で書かれている。

 一番共感を覚えるのは、「乳幼児期に人を信頼できると子どもは順調に育つ」の章である。子どもが初めて出会ったことに対して、「どうすればいいのか」と振り返った時、親や身近な人達の視線が必ず子どもを見守ってくれて、どうすればいいのか教えてくれる、そういう過程を通して育っていく人間的感情や感性をソーシャルレファレンシングと呼び、人々が共感しあうための生きるために必要な感性で、乳児期後半から2歳までの間に最もよく育つという。またありのままの自分を全面的に受け入れられた子どもはその他の人への信頼を深めてゆく。その基盤になる人は母親。そして自分の意のままにしようとせず、ゆっくり待ってやること。これは子育ての基本であり、今の子ども達に足りないものだとつくづく思う。

 小児科医になり30数年、これまで佐々木先生のお話を伺う機会が幾度となくあった。開業後まもなく出版された本を診察室に置き、時々開いている。

 自分の子育ては反省することばかり。世の中は便利になり、子ども達を取り巻く環境は一変した。それでも子ども達は未来を夢見、育っていかねばならない。なによりもお父さん、お母さん、そして子どもに関わる全ての人に読んでいただきたい本。

                                       

(上原胃腸科外科小児科クリニック・会員)