私の一冊 346号

『きぼう』―こころひらくとき

きぼう
  • 『きぼう』―こころひらくとき 
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  • ローレン・トンプソン 作/千葉茂樹 訳(ほるぷ出版)          
  •       富原 美智子         

自分の年齢や、その時々の状況により、多くの本は私を助けてくれました。自分中心にものを考えようとした時、戒めてくれたのは、数々の昔話でした。心血を注いできたつもりの物をいとも簡単に持ち去られたと感じた時、人には理解されなくとも、おまえさんの人生は、濃いピンクの人生だよ、と思わせてくれたのは、ファージョンの物語でした。また、疲れた時、気力を無くした時癒してくれたのは、眺めているだけで気持ちよくなれる、美しい絵本でした。

 今、私の心を占めている一冊は、写真絵本『きぼうーこころひらくとき』です。 ページを開くと、ガラス越しに写された女の子の顔。その目は、いつかは上がると信じて雨を見つめているのでしょうか。そこに添えられた言葉は、「きぼう それは はるか かなたのまぼろしなんかじゃない、いつだって ほら すぐそこにある」と。 ページをめくっていく毎に、いろいろな希望の形が写し出されていきます。ひとすじの涙をとどめる子どもの頬。ほとばしる怒りに口をむすぶ男の子の目。久々に会えたのであろう、父親に見守られた、安らかな子どもの寝顔等など。ささやかな事に、きぼう を見つけだそうとする子ども達の姿が写され、添えられた、短い言葉が、心に響きます。そして、最後のページに写された凛々しい男の子は、苦しみや悲しみを奥に秘め、芽吹いたばかりの植物を、両手にそっと抱え、澄んだ穏やかな目で、静かにほほ笑みかけて来ます。

 昨年は、津波、原発により、人生を変えられてしまった多くの方々に心を痛めました。そしてその復興の姿、逞しさにも驚かされています。どんな辛い状況の中でも、そこに きぼう を見いだす知恵を、人間は持っているのでしょう。きぼうとは、空に向かって心を開いたとき見えるものなんだ! 孫たちに喜寿を祝ってもらうこの歳になってさえも・・と「きぼう」を与えてくれた一冊です。

                     

(語りの森代表・特定非営利活動法人熊本子どもの本の研究会会員・福岡市在住)