私の一冊 326号

リンゴ畑のマーティン・ピピン

リンゴ畑のマーティン・ピピン
  • 『ながいながいペンギンの話』
  •     
  •          いぬいとみこ・作     (理論社)
  •  
  • 興津 暁子

 これまで久しく関係の無かった児童文学や、昔話の世界をもう一度訪れてみようとこの年になって思った。何故今なのかは良くわからないが。それで、この五月にびわの木文庫の門をたたいた。そうしたら、熊本子どもの本の研究会の会員に加えて頂き、今回、この会報に書く機会まで頂いてしまった。それならば、ずっと昔、三十年近くも前のこと、私に児童文学の世界を紹介して下さった、いぬいとみこさんのご本を紹介したいと思った。

 いぬいさんとの出会いだが、その話をするには、C・W・ニコル氏の話をしなくてはならず、うんと短くするとこうなる。その頃、黒姫山に住むC・W・ニコル氏にどうしても会いたくて、成人式の前後休みを取って出かけた黒姫山で彼に会うことが出来た。その後、ニコルさんに紹介されたペンションでいぬいさんに出会った。最初に出会った時のいぬいさんは、小さくて、丸いお顔の可愛いおばさんだった。その夜のお客は、いぬいさん、木下敦子さん、私の三人のみで、外の雪をみながら、児童文学や、児童文学の作家さん達の話を色々聞いて、興味深かったのを覚えている。その時、いぬいさんが、子供を対象にした話だからと言って、いい加減なものを書いてはいけないというようなことを強くおっしゃっていたように記憶する。

 今、『ながいながいペンギンの話』を読み返してみて、先ず、お話の輝き方にびっくりする。昭和三十二年の作品なのに、全く古くない。それどころか、とっても新鮮で、瑞々しい。はらはらどきどきの空想の世界なのに、現実感があって、子供はきっとペンギンの世界にすっと入り込むに違いない。動物の生態も良く調べてあって科学的である。これが、いぬいさんがおっしゃっていた創造的想像力のある児童文学なのだなと改めて感じる。

 その後も何度かいぬいさんにはお会いし、一緒に温泉に行ったりした。黒姫山分譲別荘にあったいぬいさんの別荘の文庫にあこがれ、いつか文庫のおばさんになりたい私である。

                  

(熊本子どもの本の研究会会員)