私の一冊 321号

青春の門

青春の門
  • 『青春の門』
  •     
  •          五木寛之 著        (講談社文庫)
  • 小野 賢志

 中学三年生から高校三年生にかけて、私の中では「読書ブーム」でした。中学の友人から「市の図書館に行くとCDがただで借りれるよ」と聞き、市の図書館に通いはじめたのがきっかけ。部活のない休日は、自転車で三十分かけて、田んぼ道の先にある図書館に通うのが日課になりました。

 現代の小説から歴史もの、音楽やスポーツ、コンピュータの実用書などなど、年間一00冊以上は読んでいたと思います。受験期には、部活がなくなった時間が読書の時間に変わりました。

 『青春の門』シリーズは、この「読書マイブーム」中で出会った本です。生まれも育ちも東北で、東京より西に行ったことがなかった自分にとって、初めて出会った「九州」は、本書の中に描かれる終戦直後の筑豊のボタ山でした。

 主人公は筑豊で生まれ育ち、高校を出て東京の大学に入学し、出会いや挫折を繰り返す。貧困、差別、学生運動などなど、描かれているのは、出会った当時、四十年以上前の時代なのに、主人公の驚き、不安、怒り、喜びなど、一つ一つの感情に共感してしまう。時代こそ違えど、二十歳前後の主人公の「斜め後ろ」を歩く高校生の頃の自分だったからこそ、ちょうど共感のつぼにはまったのでしょう。

 熊本県教育委員会の調査によると、本を読まない子どもの割合は中学二年生から増え始め、中三から高三までは約三人に一人が「月に一冊も本を読まない」。私にとって「読書ブーム」だった時期が、熊本の子どもたちにとっては「読書氷河期」なのです。自分の将来について少しづつ考え始めるこの時期に、本との出会いが少ないというのは本当にもったいないですよね。そのためには、小さいころからの本や物語への親しみを持って、本と出会えるようになるための支援が大切だと思います。精力的に活動を続ける「熊本子どもの本の研究会」の活動に、ますます期待しています!

(熊本県教育庁社会教育課長)