私の一冊 320号

『だれも知らない小さな国』(コロボックル物語①)

だれも知らない小さな国
  • 『だれも知らない小さな国』(コロボックル物語①)
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  •          佐藤さとる/作 村上勉/絵         (講談社)
  • 川村 博子

 最初の出会いは、小学校3、4年生の頃だと思う。「小さな人」という存在がとりわけ魅力的だったのを覚えている。2度目の出会いは長男が4年生の頃。研究会との出会いがきっかけで子ども時代の読書の記憶が呼び起こされ、この本をわが子と読んでみようと思い立った。保育園児だった末っ子をさし絵でだましだまし、1週間ほどかけて読み通した。冒頭の「小山」付近の地図やもちの木の皮から作るとりもち、こばしさまやセイタカさんという呼び名、黒目がちな独特の小人の絵…自分が子どもの頃に楽しんだ物語をわが子と共有する、その大きな喜びを教えてくれた大切な一冊である。

 そして今回、12年ぶりにこの本を読み返してみて、おどろいた。少年と小人が交流する話だと思い込んでいたのだが、これは、若い男女の極上の恋物語ではないか!子ども時代が描かれるのは、はじめの一章だけ。戦争の時代をはさんで、青年になった「ぼく」は、小山を自分のものにするために故郷に戻ってくる。そこで再会するのは、幼稚園の先生になったかつての女の子。小山や小人の秘密をめぐって、二人の微妙なさぐり合い(恋のかけ引き?)がはじまる。最後は、二人の心が通じ合い、懸賞金の20万円で小山も買い取り、めでたしめでたしの結末。

 昨年、現在勤務している小学校図書室に手軽な青い鳥文庫版で購入し、子ども達に紹介している。やはり「小人」という存在は興味深いようで、ちらほらと手を伸ばしてくる。同じく最近購入し、私自身が夢中で読んだのが『トビー・ロルネス―身長1.5ミリの冒険者』(ティモテ・ド・フォンベル作/伏見操訳/岩崎書店)。こちらは、こぼしさまをはるかに上回る極小サイズの少年、1本の木の世界の冒険物語だ。

 学校の行き帰り、何か動くものがいるような気がして思わず校庭の木々を見上げてしまうこの頃。物語の力が、人生の後半戦の私にも、目に見えないものの存在を変わらず信じさせてくれる。この一瞬の「豊かさ」が、有り難い。

             

(熊本子どもの本の研究会 会員)