私の一冊 318号

「竜馬がゆく」 立志編

「竜馬がゆく」 立志編
  • 「竜馬がゆく」 立志編
  •     
  •          司馬遼太郎 著        (文藝春秋)
  • 小川 長女

 今年の大河ドラマは「龍馬伝」。最近では歴史好きの女性を歴女というらしいが、龍馬が好きな女性は龍女だという。だったら私は龍女である。といっても、私の中の龍馬像は司馬遼太郎作『竜馬がゆく』をイメージしたもので、多くの龍馬ファンが増えたのにも、この『竜馬がゆく』に描かれた竜馬の影響が大きいらしい。それだけ、この『竜馬がゆく』の竜馬は魅力的に描かれている。「龍馬伝」では福山雅治が龍馬役と聞き、イケメン過ぎて最初は違和感があったが、ドラマが始まってみると、すごくいい。1週間が待ち遠しくてならない。それで25年前熱心に読んだ『竜馬がゆく』を久しぶりに読み返してみたくなった。

 この本には坂本龍馬の人間像がなんとも魅力的に描かれている。型破りで優しくてチャーミング。歴史小説とは、小説ですから、脚色の部分も多く、それを真実と勘違いしてしまう人も多いと思う。私も若い頃読んだときはそれをそのまま受け止めた。『竜馬がゆく』の、りょうまが龍馬でなく竜馬なのは、フィクションとして描くからだそうである。歴史に詳しい人によれば、『竜馬がゆく』の竜馬は美化しすぎだそうである。

 立志編では、竜馬は幼い頃気が弱く物覚えが悪いのを、母親代わりの乙女姉さんは竜馬を信じて一生懸命育て、どんどん剣術の腕が抜きん出、江戸へと剣術修行に出る。土佐にいる頃は郷士の次男坊として江戸で剣術修行の後、土佐で道場でも開ければ御の字だったのが、やはり江戸に出ると世界が広がり、黒船を見た竜馬は、これからの自分がやることについて考える。

 25年前に読んだときと違い、私は母親になり、読む視線があの頃とは少し違う。1年後には親元を離れるであろう長男と竜馬を大胆にも重ねて読んでしまう。ベースギターを抱えて旅立つだろう息子と剣術修行で江戸にでる竜馬と重ねるのも親ばかである。

(熊本子どもの本の研究会 会員)