私の一冊 317号

モンテ・クリスト伯

モンテ・クリスト伯
  • 『モンテ・クリスト伯』
  •     
  •          アレクサンドル・デュマ 作        (岩波文庫他)
  • 小堀 富夫

 本を読むのは子供の時から好きだった。両親も本はよく買ってくれた。今の白川公園にあった県立図書館児童館にも通ったものだ。  戦時中の熊中時代は、理数系が苦手だった私は家にあった叔父たちが残していた「世界文学全集」や「夏目漱石全集」など読みふけった。が、中学生の頭では理解できない本も多かった。  これらの本を本格的に読みだしたのは、終戦後の二十一年からだ。当時の「世界文学全集」には「×××」の伏字が多く、想像しながら伏字の部分を埋め読み進んだものだ。

 その時感動が深かったのに、フランスの作家アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』があった。その構想の雄大さにまだ見ぬヨーロッパへの憧れもあり、さまざまの空想をしながら何回も読み返したものだ。  物語は、若き船乗りダンテスが、熱愛するメルセデスとの結婚の直前に、恋敵のフェルナンなどにはかられ、無実の罪でイブ城の地下牢で十四年すごす。その間フェリアという僧侶から智識と執着を学び、モンテクリスト島に埋められている財宝の話を聞く。僧侶の死後脱獄に成功したダンテスは、モンテクリスト島の財宝を掘り出して、モンテ・クリスト伯を名乗り、パリの社交界で活躍していた怨敵に対し金力、智力、武力、そして教養を武器に復讐をはたすという壮大な物語である。

 舞台となったモンテクリスト島は、イタリア半島北西海上のコルシカ島近くに浮かぶ住民もほとんどいない小さな島で、十三世紀に建てられたという僧院の遺跡が残されていると聞いた。  『モンテ・クリスト伯』の物語に圧倒された私は、この島の僧院のあとで『モンテ・クリスト伯』を読んでみたいと本気に思ったものだ。が、残念ながらこの思いは実現出来なかった。

 考えてみると、もう長い間、この物語は読んでいない。改めて読み直してみたいと思う。昔読んだ時の感動が再びよみがえるだろうか。楽しみである。

(熊本県文化協会会長・熊本子どもの本の研究会賛助会員)