私の一冊 307号

コロボックル物語

今月の私の一冊307
  • 『コロボックル物語』
  • 佐藤さとる 著     (講談社文庫)
  • 河 島 一 夫 
     

 美智子皇后の著書に「橋をかける 子供時代の読書の思い出」という本があるが、その中に、「読書とは『根っこ』と『翼』を与えてくれる。」という文言がある。まさにその通りで、すばらしい表現だと思った。

 私の読書遍歴は、皆様に披露するほどの数々の本を読んでいるわけでもない。今は交流がある作家から送られてきた本を読んだり、仕事上必要な本を探して読んだりするぐらいでしかない。一番本を読んだ時期は、大学生の時である。松本清張・北杜夫・遠藤周作・畑正憲等はその当時手に入る限り読んだ。ひとつの作品が面白いと、その作家の著書を全部読みたくなったものである。その様な作家の一人に佐藤さとるがいる。確か最初に見つけた本は「星からおちた小さな人」(第三話)で、古本屋の店頭で見つけて面白そうな本だな、かわいい挿絵も入いているといった感じで、下宿に持ち帰って読み始めたら、そのファンタジックな世界に引き込まれてしまった。本を読み終わると姉妹編があることがわかった。次の日、姉妹編を古本屋に探しに行ったが、ないのである。確か大学一年生の時のことで、姉妹編を探して読んだのが大学の四年生の時、たまたま古本屋の店頭にあった時は小躍りして喜んで持ち帰った想い出がある。

 内容はご存じの方も多いと思うが、コロボックルという小人の世界の物語である。蓮の葉の下で過し、人前に現れそうだが、見つけることができないのだ。この物語は北海道の民話を元に書かれていることをその第一話を読んだ時に知った。

 四十年近く昔のことだったので、改めてこの本を取り寄せた。四話からなり第一話が「だれも知らない小さな国」第二話が「豆つぶほどの小さないぬ」第四話が「ふしぎな目をした男の子」である。童話は、子どものための読み物だけでなく、大人が童心に帰れるすばらしい読み物である。取り寄せた「コロボックル物語四部作」、早朝の楽しみとなった

                                   (舒文堂河島書店代表取締役社長)